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2026.05.06 Update

組織が役割を与える時代から、人が役割に意味を与える時代へ  ――プロティアン・キャリアから考える人材育成と組織づくり――

人材育成や組織づくりでは、「人が替わっても仕事が続く仕組み」と、「一人ひとりが役割に意味を見出せる関係性」の両方が重要になります。

特定の人に仕事が集中しすぎると、その人が異動・退職・休職したときに業務が止まってしまいます。

一方で、人をただの「代替可能な存在」として扱ってしまうと、働く人の納得感や成長実感、チームとしての信頼は生まれにくくなります。

組織には、役割を引き継げる仕組みが必要です。

しかし同時に、その役割を担う人が「自分にとってこの仕事にはどのような意味があるのか」を考えられることも必要です。

この二つの視点は、従来型キャリアとプロティアン・キャリアの違いを考えるうえでも重要です。

従来型キャリアにおける「役割に人が入る」考え方

従来型キャリアでは、組織の中に役割やポジションがあり、人はそこに配置されます。

どの部署に配属されるか。
どの役職に就くか。
どの業務を担うか。
誰が後任になるか。

このように、組織が役割を用意し、人がそこに入っていく形です。

この考え方には、組織としての強さがあります。

役割が明確であれば、仕事の責任範囲が分かりやすくなります。
業務が標準化されていれば、後任への引き継ぎもしやすくなります。
一人の人に依存しすぎない仕組みがあれば、異動や退職があっても組織の活動は止まりにくくなります。

これは、属人化を防ぐうえでも、危機管理の面でも重要です。

もし、ある人がいなくなった瞬間に仕事が止まってしまうなら、その組織はかなり危うい状態です。

「あの人しか分からない」
「あの人がいないと判断できない」
「あの人が抜けたら引き継げない」

こうした状態は、組織としての安定性を弱めます。

その意味で、従来型キャリアや組織内キャリアに見られる「役割に人が入る」という考え方は、決して古いだけのものではありません。

組織が継続的に機能するためには、役割を明確にし、人が替わっても仕事が引き継がれる仕組みを整えることが必要です。

ただし、人は交換可能な部品ではない

一方で、「人が替わっても仕事が続く」ことだけを重視しすぎると、別の問題が生まれます。

人が、交換可能な部品のように扱われてしまうことです。

誰がやっても同じ。
役割さえ埋まればよい。
成果さえ出せばよい。
その人が何を感じ、何を大切にし、どのように仕事と向き合っているかは問われない。

このような状態では、組織としては動いていても、本人の納得感や主体性は生まれにくくなります。

人材育成において重要なのは、単に人を配置することではありません。

その人が、自分の役割をどのように受け止めているのか。
その仕事を通じて、何を学び、どのように成長しているのか。
組織の目的と、自分の価値観をどのようにつなげているのか。

こうした意味づけを支えることが大切になります。

ここで参考になるのが、プロティアン・キャリアの考え方です。

プロティアン・キャリアとは何か

プロティアン・キャリアは、ダグラス・ホールが提唱した概念で、自己主導性と価値観主導を柱とするキャリア観として整理されています。

従来型キャリアでは、キャリアは組織の中で形成されるものとして捉えられることが多くありました。

どの会社に入り、どの部署に配属され、どの役職に就き、どのように昇進していくのか。

つまり、組織が用意した道筋の中でキャリアが形づくられるという考え方です。

一方、プロティアン・キャリアでは、キャリアは組織から一方的に与えられるものではありません。

個人が自分の価値観をもとに、主体的に意味づけ、形づくっていくものとして捉えられます。

ここで重要になるのは、外から見える成功だけではありません。

昇進したか。
肩書きが上がったか。
年収が増えたか。
有名な組織に所属しているか。

もちろん、これらもキャリアを考えるうえで重要な要素です。

しかし、プロティアン・キャリアでは、それだけでなく、自分にとって納得できる働き方や、成長実感、価値観との一致、意味のある経験が重視されます。

つまり、キャリアの中心にあるのは、「組織から与えられた役割」だけではありません。

自分は何を大切にして働きたいのか。
この役割は、自分にとってどのような意味があるのか。
この経験を、今後のキャリアにどうつなげていくのか。
自分はこの仕事を通じて、何に貢献したいのか。

こうした問いを持ちながら、個人が自分のキャリアを主体的に形成していくことが重要になります。

役割は、与えられるだけでなく、意味づけられるもの

プロティアン・キャリアの視点から見ると、役割は単に組織から与えられるものではありません。

同じ役割でも、それをどう受け止めるかによって、本人にとっての意味は変わります。

たとえば、若手社員があるプロジェクトの調整役を任されたとします。

従来型の見方では、「あなたはこの業務を担当してください」という役割付与として捉えられます。

しかし、プロティアン・キャリアの視点では、そこにもう一つの問いが加わります。

その役割は、本人にとってどのような学びになるのか。
本人の価値観や関心と、どのようにつながるのか。
その経験を通じて、本人はどのような力を伸ばせるのか。
組織の目的と、本人の成長はどこで重なるのか。

このように考えると、人材育成は「役割を与えること」だけでは終わりません。

その役割を本人がどう意味づけるか。
上司や周囲が、その意味づけをどう支えるか。
本人がその経験を、次のキャリアにつなげられるか。

そこまで含めて、人材育成を考える必要があります。

スーパー戦隊を補助線として考える

この話を考えるうえで、スーパー戦隊シリーズは一つの補助線になります。

昭和期の初期スーパー戦隊には、メンバーが交代しても任務が続いていく作品がありました。

たとえば、『秘密戦隊ゴレンジャー』ではキレンジャーが交代します。
『バトルフィーバーJ』では、バトルコサックやミスアメリカが交代します。
『太陽戦隊サンバルカン』では、バルイーグルが交代します。

もちろん、すべての昭和戦隊でメンバー交代が描かれたわけではありませんし、作品ごとに事情は異なります。

ただ、作品内で見ると、そこには「人が替わっても任務が続く組織」の姿があります。

個人が抜けても、役割が残る。
次の担い手が入り、任務を引き継ぐ。
組織としての目的は止まらない。

これは、従来型キャリアや組織内キャリアに見られる「役割に人が入る」構造と重なります。

一方で、『侍戦隊シンケンジャー』では、少し異なる視点が見えてきます。

志葉丈瑠は、当初「殿」としてチームの中心に立ちます。

しかし物語の終盤で、丈瑠が本来の当主ではなく影武者であったことが明らかになり、本来の当主である志葉薫が登場します。

制度上の正統性だけで見れば、薫こそが本来の当主であり、丈瑠はその役割から退くことになります。

しかし、そこで問われるのは、単に「誰が正式な当主か」ではありません。

丈瑠は何を背負ってきたのか。
仲間たちは誰と一緒に戦ってきたのか。
何のために戦ってきたのか。
リーダーとは、肩書きだけで決まるものなのか。

仲間たちは、単に「志葉家の当主」という肩書きだけで丈瑠を見ていたわけではありません。

これまで一緒に戦ってきた時間、丈瑠が示してきた覚悟、苦しい場面での振る舞い、仲間を守ろうとしてきた姿を見てきました。

だからこそ、制度上の正統性が揺らいだあとも、仲間たちは丈瑠を「自分たちのリーダー」として選び直していくように見えます。

彼らは「殿だから従う」のではなく、「丈瑠だからついていく」と選び直している。

ここには、役割があるから人が従うのではなく、人の行動と関係性が役割に意味を与えていく姿があります。

これは、プロティアン・キャリアの視点とも重なります。

組織から与えられた役割をただ担うのではなく、その役割にどのような意味があるのかを、本人と周囲との関係の中でつくっていくからです。

人材育成に必要な二つの視点

人材育成では、組織側の視点と個人側の視点を分けて考える必要があります。

組織側には、人が替わっても仕事が止まらない仕組みが必要です。

役割を明確にする。
業務を見える化する。
後任を育てる。
引き継ぎができる状態をつくる。
一人の人に依存しすぎない体制を整える。

これは、組織としての安定性を高めるために欠かせません。

一方で、個人側には、自分の役割を意味づける機会が必要です。

自分はなぜこの役割を担っているのか。
この経験から何を学べるのか。
自分の価値観と、組織の目的はどのようにつながるのか。
この仕事を通じて、どのような自分になっていきたいのか。

こうした問いを持てることが、主体的なキャリア形成につながります。

そして、上司や組織には、その意味づけを支える関わりが求められます。

単に「この仕事をやってください」と役割を与えるだけではなく、その仕事が本人にとってどのような経験になるのかを一緒に考えること。

本人の価値観や関心を理解しながら、組織の目的とつなげていくこと。

それが、プロティアン・キャリアの時代における人材育成では重要になります。

仕組みと意味づけの両方を育てる

ここで大切なのは、従来型キャリアが古く、プロティアン・キャリアが新しくて正しい、という単純な話ではないことです。

現代の組織には、両方の視点が必要です。

人が替わっても続く仕組みがなければ、組織は一部の人に依存しすぎてしまいます。

しかし、人が役割に意味を見出せなければ、主体性や成長実感は生まれにくくなります。

組織には、仕事が止まらない仕組みが必要です。
個人には、自分の役割を意味づける余地が必要です。

この二つをどう両立させるか。

そこに、これからの人材育成や組織づくりの大切な論点があります。

人が替わっても続く組織。
人が役割に意味を与えるチーム。

その両方を育てていくことが、現代の組織には求められているのだと思います。


関連記事として、noteではこのテーマをもう少し読み物として整理しています。

昭和戦隊のメンバー交代や、シンケンジャーにおける丈瑠と仲間たちの関係を手がかりに、組織とリーダーについて考えています。

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