キャリコン実技試験のロールプレイは、15分で区切られます。
では、その15分間のあと、相談をどのように続けていけばよいのでしょうか。
相談者が訴えている問題を、15分ですべて解決することはできません。大切なのは、15分までに得られた相談者理解をもとに、主訴、その背景にある課題、相談者が中長期的に望む姿を捉え、その先の支援を考えることです。
この構造は、『仮面ライダーW』の事件解決と重なって見えます。
メモリブレイクで、依頼は終わるのか
『仮面ライダーW』では、まず翔太郎が依頼人に寄り添い、話を聴きます。
依頼人や関係者と関わりながら情報を集め、本人が何に困り、何を解決してほしいのかを明らかにしていきます。キャリア相談でいえば、相談者と一緒に主訴を確認していく過程です。
フィリップは、翔太郎が集めた情報を整理し、必要な情報を「地球の本棚」で検索します。そして、事件の構造や、その背景にある問題について仮説をつくります。
これは、相談者の語りを整理し、主訴の背景にどのような課題があるのかを考える「見立て」に近いものです。
翔太郎が依頼人に寄り添って情報を集め、フィリップがその情報を整理して仮説をつくる。そして二人は仮面ライダーWとなり、ドーパントを倒してガイアメモリをメモリブレイクします。
メモリブレイクは、依頼人が「何とかしてほしい」と持ち込んだ目の前の問題、つまり主訴に対する具体的な解決と見ることができます。
しかし、『仮面ライダーW』の物語は、メモリブレイクしたところでは終わりません。
主訴の背景にある課題にも向き合う
ドーパントを倒せば、目の前の事件は終わります。
しかし、その事件を生み出した背景まで、メモリブレイクによって自動的に解決するわけではありません。
事件の背景には、嫉妬や執着、思い込み、人とのすれ違い、受け入れることのできない喪失などがあります。
そこで、変身を解除したあと、翔太郎やフィリップは、依頼人や事件の関係者にもう一度向き合います。
- 事実を伝える
- 問いかける
- 本人が目を背けていたことに触れる
- これからどうするのかを一緒に考える
依頼人や関係者が、自分の思いや行動を振り返り、関係を見直したり、新しい一歩を選んだりすることで、一つの依頼が本当の解決へ向かいます。
キャリア相談でも、相談者が訴えた問題への方策だけで、相談が終わるとは限りません。
たとえば、「応募しても採用されない」という相談に対して、応募書類を修正し、求人の探し方を一緒に考えることは、主訴への具体的な方策です。
しかし、その背景には、次のような課題があるかもしれません。
- 自分の経験を十分に整理できていない
- 希望する仕事について理解できていない
- 周囲の期待だけで応募先を選んでいる
- 失敗を恐れて選択肢を狭めている
その場合には、質問や応答を通して気づきを促すこともあれば、不足している情報を提供したり、仕事を知るための経験を提案したり、具体的な行動を一緒に考えたりすることもあります。
見立ては、相談者の問題点を言い当てるためのものではありません。主訴とその背景にある課題を捉え、どのような働きかけが必要なのかを考えるための仮説です。
15分で無理にメモリブレイクしなくてよい
キャリコン実技試験では、15分以内に何かを解決しなければならないと考え、相談を急いでしまうことがあります。
しかし、相談者との関係が十分にできていない、主訴がまだ明確になっていない、背景にある課題について確認したいことが残っている。その状態で方策へ進めば、キャリアコンサルタントが考えた解決策を押しつけることになりかねません。
もちろん、15分の中で自然に方策提案まで進んだように感じることがあるかもしれません。
しかし、大切なのは、必ず方策提案まで進むことでも、反対に話を聴くだけで終わることでもありません。
15分までに、次のことを考えられる状態にしておく必要があります。
- 相談者は何に困っているのか
- その背景に何が影響していると考えられるのか
- さらに確認したいことは何か
- このあと、どのような働きかけが必要なのか
15分の終了は、相談の終了ではありません。
その時点までの相談者理解と見立てをもとに、このあと相談をどのように続けるのか。口頭試問で今後の方針を説明するときにも、この視点が必要になります。
中長期的に望む姿まで見据える
15分のあとに考えたいのは、目の前の主訴をどう解決するかだけではありません。
相談者は、中長期的にどのような働き方や生き方を望んでいるのか。今回の困りごとが解決したあと、どのような状態になっていたいのか。同じような問題に直面したとき、自分で考え、選び、行動できるようになるためには、どのような支援が必要なのか。
そこまで見据えて、相談の方向を考えていきます。
たとえば、転職するかどうかに迷っている相談者に求人情報を提供し、転職先を決めれば相談が終わるとは限りません。
相談者が望んでいるのは、自分の価値観を大切にしながら働くことかもしれません。家族との生活を守りながら働き続けることかもしれません。自分の経験を生かし、納得できる仕事を自分で選べるようになることかもしれません。
その希望する姿を、キャリアコンサルタントが決めるわけではありません。
翔太郎が依頼人の人生を代わりに決めないように、キャリアコンサルタントも、自分が考える正解へ相談者を導くのではありません。
相談者の語りや価値観を確かめながら、本人が希望する姿を一緒に描き、その方向へ進むために必要な支援を考えていきます。
現在の主訴。
その背景にある課題。
相談者が中長期的に望む姿。
この三つをつなぎ、主訴への方策と背景課題への働きかけを組み合わせることが、その先の支援になります。
15分のその後まで考える
『仮面ライダーW』の魅力は、ドーパントを倒すことだけではありません。
翔太郎が依頼人に寄り添い、フィリップが情報を整理し、二人がWとなって事件に対処する。そして、メモリブレイクのあと、もう一度その人に向き合う。
目の前の事件を終わらせるだけでなく、なぜその事件が起きたのか、その人がこれからどうしていくのかまで考える。そこに、鳴海探偵事務所の仕事があります。
キャリアコンサルティングも、相談者が訴えた困りごとに対して、15分間話を聴くだけではありません。
15分までに得た相談者理解をもとに、主訴への方策と、背景にある課題への働きかけを考える。さらに、相談者が中長期的にどのような姿を望んでいるのかを確かめ、その姿へ近づくための相談を続けていく。
大切なのは、15分で無理にメモリブレイクすることではありません。
15分で得られた情報を、主訴、背景の課題、相談者が希望する姿へとつなぎ、その人の相談をこのあとどのように続けていくのかを考えることです。
noteでは、仮面ライダーWの物語と重ねて詳しく紹介しています
noteでは、翔太郎、フィリップ、仮面ライダーWの役割と、キャリコン実技試験の15分後に必要となる支援について、もう少し読み物に近い形でまとめています。



